kur0cky

こんにちは

マラソンではじめる効果的なKPT

この記事は Sansan Advent Calendar 2022 20日目の記事です. 昨日は id:nersonu さんによる「高速かつ PEP 582 で仮想環境を捨てる Python パッケージマネージャ PDM を試す」でした. PEP582もPDMも知らなかったので勉強になりました. これまでの記事は以下からご覧ください.

adventar.org

はじめに:振り返り

さて,2022年はどんな1年だったでしょうか. 私はというと,苦しいながらも,継続とチャレンジのバランスが取れた1年だったような気がします.

継続では,学生時代からの研究で学会に行ったり論文を出したり,去年から続いているランニングではマラソンに出たりしていました. チャレンジ面では,新しい研究プロジェクトをキックしたり,これまで縁のなかったギターを始めたりしました.

ラソンは,2本のフル (42.195km) と1本のハーフ (21km) に出場しました. 4月に出た長野マラソンでは,初出場にしてサブ4(4時間切り)を達成することができました. これは上位3割ぐらいの成績です. 一方,12月に出た青島太平洋マラソンでは,4時間48分もかかってしまいました. 4時間切りは余裕だろうと高を括っていたので,非常に悔しかったです. 悔しさのあまり,その夜は焼酎に溺れていました. あまりに悔しいので,雪辱を果たすべくしっかりと振り返りを行い,次に活かしたいと思います.

長野マラソン(4月)と青島太平洋マラソン(12月)のタイム

ところで,振り返りって難しいですよね. 何かを改善するための振り返りならば,たくさんの方法が知られています (何かを改善することだけが,振り返りの目的ではないとも思います). なかでも最も有名なものはKPTでしょうか. 私も,業務ではKPTを実施することがしばしばあります.

KPT とは,次の3つのステップで現状を分析するものです.

  • K:Keep(良かったこと,これからも続けること)
  • P:Problem(悪かったこと,改善すべきこと)
  • T:Try(次に試みること)

このフレーム(制限)に従うことで,振り返りのコメントを出しやすくなることや,挙げられたKeepとProblemから自然なTryが考えやすくなることなどのメリットがあるでしょう. また,チームで実施することにより,様々な視点で,合意のとれた次のアクションを取ることなどができます(今回は1人で実施します).

一方で,個人的には,KPTでの振り返りには漠然とした難しさを感じていました

このポエムでは,次のレースをより良いタイムで走ることを目的とし,大失敗した青島太平洋マラソンを対象に振り返りを実施したいと思います. またその中で,私が感じているいくつかのKPTの難しさを克服することを試みてみます.

しばしお付き合いください

KPTへの課題感と思索

私が抱いていた課題感(難しさ)を要約してみると,以下のようにまとまりました.

  • Problemばかり上げてしまう
  • 何についてどの粒度で書くか難しい.結果として幼稚な感想になってしまう
  • Tryが継続的に実行できているか,計測できていない(建てるだけにしない)

それぞれについて考えてみます.

Problemばかりあげてしまう

Keepが少なくProblemばかりになってしまっているな,という漠然とした感覚がありました. 悪いとこばかりに目が行きがちなのかもしれないですね. また,そもそもKeepが少ないことは問題なのか,という自然な疑問があります.

Keepには,「前回までのTryのうち良かったものを拾い上げ継続させる」, 「Tryには由来しないが,フワッと始めた手応えのある取り組みをより本格化させる」, などの効果があるはずです.

こういったものを見落としてはもったいないので,Keepを見つけることはたしかに重要そうです.

何についてどの粒度で書くか難しい

おそらくこれが最も問題です. 「良いことはなんだったか」「問題はなんだったか」という問い(制限)だけでKeepやProblemを挙げるだけでは,雑多なものになってしまうのは当然かもしれません.

これは私のケースですが,Problemにおいてそもそもの行動が悪かったのか,途中の状態が悪かったのかを混同して書いてしまうことがよくありました. また,客観視できるものと定性的な主観が混ぜてしまってもいました.

もちろん,満遍ない切り口で振り返り発散させることは大切だと思います. しかし,現実的なリソースで効果的なTryを見つけ実施するためには,自分の影響できる範囲とそうでない範囲を見定め,中でも結果に直結しそうなところに介入するのが重要そうです. そのためには,想定される全体のメカニズムの中でどの部分に言及しているのか,またその言及は感想から数値に落とし込めるのかを考えることが良さそうです.

Tryが継続的に実行できているか,計測できていない

いくら良いTryを立てても,適切に実行されなければ意味がありません. そのためには,Tryを実行できているか,その進捗はどうなっているか,継続的に振り返る必要があります.

人間が努力により意識的に行動するのは限界がある,と個人的には考えています. ウィジェットやツールを駆使することも考えられそうですが,そのうち慣れきってしまい効果がなくなると容易に想像されます. 1ヶ月後には,「走る時間です」「目標の月間100kmに対して現在30kmです」のような通知を一瞬でスワイプアウトしているでしょう.

以上より,軽量な振り返りを短く回させざるを得ない状況を用意することが重要そうです. 少なくとも,半年に1度しかレースに出ていない現状は不適切といえそうです.

課題への対策

前節で挙げた課題とそれについての思索から,以下のような対策を考えました.

  • はじめに自分の行動と,それが結果に影響を及ぼすまでのメカニズムを想定する
    • このとき,自分の介入できる部分とそうでない部分を切り分ける
  • 想定したメカニズムと睨めっこしながら,定量値と感想を集め,Keep候補 / Problem候補とする.
  • 候補を精査し,Keep / Problem を練る
    • カニズムのどの部分への言及なのか
    • 感想はできるだけ定量指標に落とし込む
  • Tryへと昇華させる
    • 想定されるメカニズムのどこに介入すると効果が大きいかを考える
    • 環境や運の要素が大きくても,コスト低くできるなら取り入れる
  • 上記一連の振り返りを短期間で実施しなければならない状況を用意する

実践:マラソンではじめる効果的なKPT

それでは,これまで考えたKPTの改善をもとに,大失敗した青島太平洋マラソンを振り返っていきます.

まず,KPTに入っていく前の作業をします. 具体的には,振り返りサイクルを回さざるを得ない環境を用意します. そして,マラソンにおいて行動から結果が出るまでのメカニズムを想定します.

振り返りのサイクルを回す状況を用意する

  • 友人とのランニング会を月に1度固定で入れることし,カレンダーを押さえました.
  • ハーフマラソンに3ヶ月に1度,本番の前3ヶ月は1ヶ月に1度出ることにしました.

行動から,結果が出るまでのメカニズムを想定する

次の図のように整理しました. 介入できるものは角のある四角で表しています.

Keep候補

上記メカニズムに立ち返りながら,KeepとProblemの候補になる事象・感想を集めていきます

  • 2本のフルマラソン,1本のハーフマラソンにエントリーした
  • ハーフマラソンでは自己ベストを更新した(1時間48分)
    • 平均心拍数は184
    • 足の痛みなどもなかった
  • 年間609km走った
  • やれる調整はやった
    • レース1週間前の距離抑える.強度少し高めとジョグ混ぜる
    • カーボローディングした
    • カフェイン断ちした
  • 青島太平洋マラソンでは,中間地点までは平均心拍数175程度で巻き返せている
    • 一方で,道が狭く,序盤ペースを挙げるのに(人を抜くのに)集中力を使った(Problem)

Problem候補

本番(青島太平洋マラソン

  • 暑かった(19度,快晴)
  • 足攣った(25km地点)
  • 足が攣る直前,21 ~ 25kmでペースが落ちている→バテ?スタミナ?
  • 12月のフルマラソンで足が攣った
  • 前日に飲酒をした
    • ビール5本程度,焼酎
    • 地鶏,刺身,チキン南蛮,etc
  • レース後膝痛い.
    • 長野マラソンではそこまででなかった.→ 距離が足りない,フォームは問題ない
    • 痛みがあるのは靭帯 → 筋肉量が足りない
  • 睡眠時間が足りてない
    • 本番前1週間の平均が5時間
    • 最近不眠の傾向あり

本番までの練習

  • 夏(1本目のフルマラソン以降)に全く練習していない
    • 5~9月の走行距離が40km程度
    • いずれも1km6分ペースでの5kmジョグ(ポイント練習の欠如)
  • 秋の走り込みが足りてない
    • 月間60 ~ 80kmしか走ってない(長野マラソンの前は100km走れていた)
    • 21km以上走った日がない
  • VO2maxが長野マラソンのときと比べて4低い(心肺機能の低下)
    • 夏の全く走らなかった期間の下落が大きい

Keep

Keep候補を精査し,サマります.

  • 21kmまでの対応は現状の練習で問題ない
    • 足の状態をみても,カーボンシューズで21kmは耐えれる
  • 継続的にフルマラソンにエントリーしている
  • 巡行できるスピードは上がっている.

Problem

続いてProblem候補を精査し,サマります. Keepを踏まえ,21kmまでは対応できていることや,それ以上の距離に耐える足が作れてないことを考慮しました.

お酒は美味しいので不問とします. 睡眠時間が短いのもどうしようもないので諦めます.

  • ハーフ以上の距離に耐えられる足がない
  • 距離を走らざるを得ない環境が用意できてない
  • 気温(19度,快晴)にやられた
    • 暑さや日光の対策をしていない
  • 足攣りの対策をしていない
  • 夏に走り易い環境がない
    • 距離は短くて良く,全く走らないことでVO2maxが下がるのが問題

Try

装備

  • 装備で暑さ対策をする(お金に頼る)
    • 短パン
    • サングラス
    • 髪を切る
  • 足攣り対策をする
  • 後半の集中力を高める
    • カフェイン入りの補給も試す
  • 長い距離で厚底シューズを履きこなす
    • スピード練習だけでなく長いペース走でも必ずズームフライ4を履く

立川シティハーフに向けた練習

  • 友人と1ヶ月に1度ロング走の予定を入れる
    • 毎月最終曜日に設定
  • 長めのペース走を中心にする.
  • 精神負荷をかけない
    • 月間100km以上は走らなくて良いことにする
    • スピード練習はやる気があるときにやる

ちょっと先の練習

  • 夏に自然と走る体制を作る
    • 短期ジムを契約する(6~9月)
    • スピード練習と筋トレ,アクティブレストのみに絞り,45分以上は運動しない
  • 秋に距離を走る
    • レースの3ヶ月前から,毎月ハーフマラソンにエントリーする
    • ハーフマラソンと並行し,ロング走の予定も実施する
    • 月間100km以上は走らなくて良いことにする

おわりに

オレオレでKPTを改善し,実践してみました. 改善した振り返りが適切であったかどうかは,今後のタイムが証明してくれることでしょう.

明日は sin_chir0 さんです.楽しみですね.

それではごきげんよう